研究としての正しい理解のために
株式会社レイル×名古屋大学鈴木智之研究室の共同研究(2022年6月~2023年8月仮説導出完了により取組終了)
「ダーク・トライアドの高い人(「ダークな人」と呼ばれることもあります:以下の論文参照。本研究は人間生活全般ではなく,職場のみの限定的場面を対象とするため,人材という仕事場面に限定した表現を用いています。ダークとは,この研究潮流における名称ですのでまずその点を留意下さい)が悪い面ばかりを持ち,例えばサイコパシー傾向の高い人(パーソナリティ特性研究分野におけるダーク・トライアドに関する研究ではサイコパスと呼称されることがあります)やナルシシズムの高い人(同研究ではナルシシストと呼称されることがあります)などと呼称すること自体に問題がある」というのは誤った,それ自体が偏見的な理解です。職場で働く人々の中にダーク・トライアドの高い人がいることはこれまでの数多くの既存研究で既にわかっている,というのが本検討の出発点としての基礎認識にあります。こういった人々の問題ばかりでなく,良い面も豊富にこれまで国内外で既に紹介・報告されています(例えば,ダーク人材が,リーダーとしてのポジションに就きやすく,給与が高く,キャリアの満足度が高い実証研究などがあります)。よって,問題は「ダークな人=悪い所ばかり」「ダーク人材=悪い人」「サイコパシー傾向が高い、ナルシシズムが高い,マキャベリアニズムが高い=悪」という単線的な考え方で人物を理解して論じることです。ダーク・トライアド研究において繰り返し指摘されている「向社会的」な面は,欧米そして日本国内の研究で広く知られており,これは学生を対象にした採用選抜場面や社員を対象にした早期退職問題の検討場面にも当てはまります。
ダーク・トライアドの高い人々の多面性を理解し,ポジティブな職場行動に繋がるにはどうすればよいかという検討も,問題面と併せて行ったのが,ニュースで明示した通りの本研究です。ダークという語には多様な意味が含まれ,深みがある,謎めいた,などの意味もあります。本研究は,こういった多義的な語に基づく人物像を設けながら,職場での輝き方・活かし方という,ポジティブな可能性も見据えて検討を行いました。ダーク・トライアドの高い人材について,どのようなダーク・トライアドの下位特性の組み合わせや状況変数との関わりが早期退職に繋がり,一方で,別の下位特性の組み合わせや状況変数との関わりが活躍に繋がるのかを明らかにして,各人材の個性を踏まえた活用・働き方を考え,個人と仕事の適合向上を図ろうとしたものです。
正しい理解のために,以下に比較的平易に書かれていて,読みやすい文献を紹介します(本研究の成果ではありませんが,基礎理解として本研究も踏まえているものです)。一面的過ぎる人物への理解に基づいて考える前に,ダーク・トライアドが属するパーソナリティ特性研究(性格特性研究)分野において,サイコパスやナルシシストなどと呼称される人々についての向社会的な面を含めた,多面的な理解を正しく進める上で参考にしてください。
・学術論文の例:「ダークな人」としてネガティブとポジティブな面がそれぞれ整理されています。
心理学評論 2018年 Vol.61, No.3 「ダークな」人たちの適応戦略 リンク(Jstage)
・学術論文の例:例えばダーク・トライアドの構成要素の一つであるサイコパシー(傾向)について「psychopathy employees」という表現が国際的に著名なビジネス倫理(business ethics)を扱うジャーナル論文で掲載されています。人材という語をダーク・トライアドに関連して用いているのはこのような国際的な概念呼称や研究動向に配慮したものです。
Journal of business ethics リンク(Springer Link)
・ビジネス系記事の例:ネガティブな面が強調されていますが,ビジネス場面でのポジティブな面についても一部触れられています。
ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビュー(日本語) リンク1(DHBR) リンク2(DHBR)
AIについて,AI=コンピュータが全て自動計算する,と直結させて,人間が全く介在しない方法だとイメージだけで捉えている人が少なくないようですが,それは正しい理解ではありません。人間(研究者)が理論を参照しながら統計解析した結果に基づいてAIを使うという形も数多くあります。この検討の歴史は,主に海外において古くからなされてきた人間の特性理解のためのAI研究に見てとれます。本研究で用いたものは,人間以外のコンピュータが全て自動計算し,人間の知らないところで理解不能なアルゴリズムが作られて対象者に○×を付ける,というものではありません。AIは多くの企業実践事例と専門書が示すように,人間(専門家)による理解・解釈・設計が強く求められる分野も含まれます。AIについて漠然とした不安や恐怖を感じる方はまずAIおよびその基礎となる統計学の書籍を数冊読み,何がAIなのかを正確に理解することが求められるでしょう。AIを触ったり作ったり,また書籍を読んだりすることで正しい理解が得られます。
当然のことではありますが,念のために補足すると,本研究におけるデータセットは全て個人特定が不可能なもののみが用いられました。個人情報を一切取得しないことを徹底した研究デザインを用いたため,具体的に誰が早期退職するかどうかという意思決定に本研究は一切使えません。当方が個人を特定しないことの研究的工夫はかなり緻密になされています。個人特定がなされない上での早期退職者の要因の統計分析とそれに基づく早期退職候補者への対応検討などは本研究分野で既に極めて多数の文献でなされており,本研究もそれと同じ立場にあります。例えば,外部調査会社のパネルデータを用いた既存研究,また,外部調査会社と大学の共同研究によるパネルデータを用いた既存研究,個人へのインタビュー調査による既存研究等々がこれまでに研究分野では報告されています。早期退職に関連した統計解析について詳しく知りたい方は,あくまで一例にすぎませんが以下に比較的わかりやすい文献を紹介しましたので参照してください(本研究の成果ではありませんが,基礎理解として踏まえているものです)。より詳しくは,Jstageにおいて「早期退職」または「早期離職」で検索すると,査読付きジャーナル論文がそれぞれ500件以上,450件以上該当し,早期退職・早期離職に繋がる要因を研究者が分析し,早期退職・早期離職による組織および個人の問題解決を企図した研究例が多く確認されますので,併せて確認されると理解が深まると思います。早期退職による社会問題は広く知られているところであり,多様な観点から早期退職者の要因分析や,それを先だって防ぐための検討が国内外で進められており,その系譜に則った研究として本研究は検討されました。
また,入社前の段階から入社後の仕事の成果や問題行動(CWB:退職を含む)を統計的に予測するという検討は選抜研究分野において20世紀から長くなされてきたものです。今日まで極めて多くの既存研究が蓄積されており,20世紀末には既にメタ分析もなされるに至っています。一般知的能力,ビッグファイブ,ダーク・トライアド等々から入社後の働きぶりを予測する取組が盛んになされてきました。日本国内の大学の研究者や民間企業の研究所などによるメタ分析も存在し,有力な学術誌に古くから掲載されています。以下に選抜による予測に関する世界的な代表的論文例を紹介しておきますので参考にしてください。いずれもメタ分析による研究のため,参考文献も確認すると歴史及び動向の理解が進むものと思います。なお,相関と因果についての論点は,概念間の原因と結果に関する一般的な仮定を諸研究群から確認すること,また,相関分析だけではなく,因果関係を直接検討するデザインの他研究も多くあることを確認することをお勧めします。本研究の予測については同分野の系譜に則りました。なお,これらの既存研究でも管見の限り個人特定はなされていません。本研究も個人特定不可能な状態のデータセットに限定して研究を進めたのは,このような学術的背景があります。既存研究の多くでは統計的手法が用いられ,今日の文脈で言えばAIが用いられていると解釈しても良いでしょう。ただし,ここでもAIという語の持つ多義性には留意が必要であり,全て機械が意味不明な数式を勝手に作り,自動採点して○✕を付けるものだけがAIだと勘違いしないことが重要です。
・学術書籍の例:早期退職者の要因について,上司や同僚との関係性などについて統計解析手法を用いて論じています。
日本労務学会誌 2019年書評 若年者の早期離職 リンク(Jstage)
・世界的に有名な学術論文の例:入社前から予測を行う選抜手法についてのメタ分析。性格を含む多様な概念を用いて予測を行っています。
Psychological Bulletin, 1998, The validity and utility of selection methods in personnel psychology. リンク(APA)
・世界的に有名な学術論文の例:退職を含むCWBの予測を行う上でパーソナリティ特性を用いた統計解析手法です。
International Journal of Selection and Assessment, 2002, The Big Five personality dimensions and counterproductive behaviors. リンク(APA)
・これら以外に,退職をCWBと捉えた上で影響関係を分析する統計技法によって,退職の予測・防止をパーソナリティ特性から行うことを企図した研究例は複数あります。
本研究とリクナビが過去に行った内定辞退率の商用販売問題の内容の差異がはっきり理解できないままの方,また,リクナビが過去に行った内定辞退率の商用販売問題について内定辞退を組織側が事前予測するという予測検討自体が単体で問題であると勘違いしている方(=問題の特定が出来ていない方)が多いようです。それがないままに,リクナビ事件と同じような話だから危険だ,という場合には理解が不足し,全く論点が定まっていません。早期退職研究やCWBを予測する選抜研究,AIなどについてのこれまでの研究潮流をまず踏まえていただく必要があります。また,リクナビ事件の内容について,イメージだけではない,しっかりとした理解もしていただく必要があります。早期退職を含むCWBやジョブ・パフォーマンスを選抜研究によって見極めることの是非への理解が曖昧な方,ダークな人を捉える価値への理解が曖昧な方などは,自身の持論を構築する前提として数多くの既存研究,そこでの潮流や課題関心を詳しく知ることが求められるものと思います。
個人が自分に適合する組織やジョブを見出すために就職活動はなされ,また,組織が自社に適合する個人を見出すために採用活動はなされていると考えます。個人が仕事を自ら選び,組織は選抜を行います。その選抜の妥当性は個人にとっての望ましい仕事探しへの一助となり得ます。本研究は国内外の既存研究を踏まえ,特定のデータセットを用いて,統計手法を用いて選抜妥当性の実態と可能性の一部を検討したものです。そのデータセットの外への一般化妥当性までは言及していません。別のデータセットでは別の結果が得られることも十分あり得ます。
現在,米国ではAIを用いた雇用・採用についてその肯定的な可能性も認めながら,適切なシステムが用いられるような検討が進められています。日本企業でもAIを用いた就職試験が普及する今,そのような議論がなされるべきであると考えます。AIを用いた採用選抜の利点や問題点を具体的に指摘するためには,概念的な人間尊重・個性尊重の議論はもちろん必要ですが,具体的な実証的検討も必要です。本研究は匿名性を徹底し,また企業への実導入を行わずに,学術的観点からの具体的な実証的研究として,その利点や問題点の可能性を検討することも目指したものです。
AIの個別要素を定めずに,また正しい理解を経ずに「AIは悪だ」とイメージで論じ,「採用試験にAIはどんな場合でも使わないほうがいい」,「採用試験ではAIでなく人間が評価すべきだ」と具体的・実証的思考が進んでおらず,また「ダークな人は悪い」などというレベルで検討しているうちは,日本国内における就職試験の議論は進みません。就職試験に近い試験に入学試験がありますが,例えば,TOEFLなどの英語テストが大学院入試合否に何らかの影響を与えることがあり,TOEFLの質問とその採点にはAIが用いられ,その人の英語能力水準に適合した問題が自動で提示されるように改良を重ねて工夫されています。
就職試験においてもその人の個性にあった検査や質問を行うことで,よりその人の理解が進む可能性があります。全ての学生に同じ面接をし,面接官が全ての人の個性などを無視して,終始面接官が属人的に考えた質問をするのが個性や人間性を尊重した就職試験なのかどうか,それで就職活動・就職試験は十分な機会と言えるのか,という疑問にも繋がります。人間による,指針なき面接の低い信頼性や妥当性は既存研究で多く実証され,研究分野では常識化しています。この低い信頼性と妥当性を放置し,「人間が面接さえすれば大丈夫だ」と考えることも多くの危険性を伴うことは極めて数多くの研究の歴史が証明してきている,常識的知見です。また,実務的にはこれまでと同じ方法では同じ問題が量産されるだけです。それを実証を伴わず「人間性尊重」という抽象的な概念の下に放置するよりも,倫理に配慮した上で具体的検証を行うことの意義はあるものと考えます。この点の理解がまず必要であり,これらの知見を無視した議論には大きな視角が欠けています。会って採用選抜する面接においても構造化面接が用いられ,そこには高度な統計手法が用いられて面接の質問項目や評定尺度などが20世紀来定められてきました。統計を用いることで人間がただ考えるだけでは気づかなかったことに気づき,早期退職の予防,定着(リテンション)促進,ジョブ・パフォーマンスの創出,その他のCWB防止などの観点から組織と個人の適合を採用選抜を通して図ることは最近始まったことではなく,長く続く数多くの学術研究と社会実践においてなされてきたことです。
多様な議論が必要とされている中で,イメージや印象に惑わされずに,AI,統計学,適性検査,パーソナリティ研究,CWB,P-E Fit,P-O Fit,P-J Fit,選抜研究などの各要素への理解を徹底し,日本国内での採用選抜へのAI活用の実態を踏まえたときに今後の方向性に向けた具体的で意味のある議論がなされます。採用選抜における欧米でのAI規制は具体的なバイアスの実証などがその重要な論拠の一つになっています。そのような論拠が,欧米とは異なる人材採用慣行を有し,採用選抜手法が用いられる日本において大きく不足しています。必要な論拠は性差や人種差によるバイアスだけではありません。数多くの関連研究の系譜において採用選抜はそれらのバイアス除去だけを命題にしてきていないことは明白です。性差や人種差のバイアスさえ生じなければいい面接や適性検査などの就職試験なのか,ということです。適合しない組織に入職して意に反して早期退職してしまったり,個人の居場所が職場で得られなかったり,向かない仕事に日々従事したり,上司と合わずに憂鬱な気持ちで職場に通勤する毎日を送ったり,その結果,組織における人的資本のパフォーマンスが向上せずにステークホルダーに望ましい効果が得られなかったり,という諸々の問題の一因は,指針なき,人間の直感任せの採用選抜にあることは,これまでの国内外の数多くの調査・研究が証明してきました。統計を用いた採用選抜の実証研究を行うことなしにはこれらの問題は放置されたままです。採用選抜において統計や上記の意味でのAIが危険だということは「これらの問題を放置しましょう」と言っているのとほぼ同じことです。AIの裏返しが人間性なのではありません。人間が属人的に採用選抜する危険を放置し,上記の意味でのAIを認めないことが,個性を重視した,望ましい就職試験なのかどうか,ということについて熟考する必要があります。それらを含む多様な観点から,日本においても研究レベルで匿名性を徹底した上で,企業での実運用とは切り離して,学術研究としての多様な観点からの実証知見の蓄積が必要だと考えています。本研究はその知見の一つに過ぎないものです。
早期退職などをどれだけ重視するかは企業・組織による状況依存性が極めて高いテーマであり,全ての状況において重視されるものでもないため,実証知見はこれ以外の観点からも必要とされ,その場合においてデータがどれだけ説明力を有するのか,その程度や限界,問題を明らかにしていくことが議論の基礎として必要です。
加えて,本研究の精度の高さは短期間で容易に実現されたものではありません。関連する基礎となる検討は15年以上前に開始され,極めて数多くの試行錯誤を長年に渡って繰り返してきた検討成果です。検討の蓄積なくAIにデータを投入して,出てきた結果を妄信するものとは大きく異なり,専門家による長年の検討が活かされたものです。一般的な(誰でもある程度想起し得る)アルゴリズムにいきなりデータを投入しても本研究のような成果は,まず到底得られないでしょう。長期にわたって獲得された極めて数多くの専門的知見が含まれています。
以上,まずダーク人材という名称については「ダークな人」などを扱ったダーク・トライアドの既存研究をご覧ください。本研究は人材という職場に限定した表現を用いており,「人」よりも狭い意味の,職場という限られた社会場面での検討です。そしてダーク人材としての特徴が反社会的な行動だけではなく向社会的な行動を導くことを知った上で,職場においてその向社会的な行動が発揮される条件特定が今,世界的に統計手法を用いて盛んに検討されているということ,日本企業はその検討が非常に遅れていることも理解してください。日本企業で,例えば職場や上司に不満を持ちやすい人が,早期に退職する場合もあれば,組織で活躍する場合もあって,その違いが何なのかは,組織のマネジャーのみならず,働く本人にとっても有用な知見となる見込みがあり,そのような研究検討自体がそもそもどこまで可能なのか,を限られたデータセットで検討したのが本研究です。そういった人が活躍できる条件が一部でも明らかになれば,組織や個人はその知識を活かしてよい良い職場をともに創っていけます。本研究では,まず小さなデータセットではダーク人材としての特徴によって早期退職を高い精度で予測できましたが,ただし,データセットを広げて多様な属性を含めた場合には,ダーク人材としての特徴が全て早期退職にすぐに繋がったわけではなく,職場で活躍する場合もあることが確認されました。その条件特定の検討は,他の状況下のデータセットも含めて今後総合的に続け,本テーマへの貢献を微力ながら目指す予定です。本研究の結果が,他のデータセットでも再現されるか,企業への実装をどうするかは本研究が主張できることではありませんし,そのような主張もそもそもしていません。これは一般的な実証分析で言えることですので,本研究をご自身で拡張して考察されたい方は新たな実証をされてください。実証ないままにイメージで拡張する人もいるようですが,それを行うにはイメージではなく実証を新たに行っていただく必要があります。イメージのみでダーク人材や採用AIはどうだ,という話をしていても,日本企業の組織・個人適合や望まない早期退職問題は改善されません。特定データセットによる実証分析の基礎ですので,その点は留意をお願いします。そして,早期退職研究の既存文献と同じく,個人が特定可能な情報を当方が取得しないことを徹底した研究であることも付言しておきます。最後に,早期退職予防・採用選抜の研究自体が危険だというイメージを持つ人もいるようですが,本研究は既存研究群に則って,そのような立場をとっていません。早期退職予防研究やそのための人材採用選抜研究,それらの基盤としての統計手法というものに有用性を認める立場を本研究はとっています。早期退職予防や採用選抜に関する経営学・組織心理学研究自体が組織・個人適合に有用な知見に一切もたらさずに,企業に実装されたら危険だという主張をもしされたい方は,研究分野への批判的検討を別途確かなファクトを収集して進めていただければ良いものと考えます。組織側の生産性,例えば人的資本の採用に関わる費用,教育費用,組織風土の醸成,不祥事の抑制,計画的な人材育成と顧客サービスの実現,パーパスの実現などの観点以外にも,個人側の適職実現,働きやすい職場やジョブへの就職,それによる職業人生の発展,自身が持つポテンシャルが開花しやすい職場の見定め,それによる働き甲斐の実現などを含め,それ以外にも総合的な観点から,同研究分野の企業実装への危険性の有無をご自身でデータをもとに実証して評価されれば良いものと考えます。当方とは研究上の立場は異なるものの,多様な意見を取り入れ,組織と個人の関係性について検討したいと考えます。
なお,本研究による成果物ではありませんが,ダーク・トライアドの高い人材が向社会的に働くことができる条件特定についての海外研究レビューと経営学的考察に関する書籍出版を2024年中に予定しています。その他にも,本研究による成果物とは別に,同条件特定への検討成果を今後中長期的に発表する予定です。わが国において,職場におけるダーク・トライアドが悪い面ばかりであるという偏った見方を変え,一方では,その問題行動の側面からも目を逸らさずに,企業経営や就職にどのような効果や限界があるのかを明らかにすることを中長期的に目指しています。多様な心理的特徴を持った個人がいきいきと働き,不本意な仕事や憂鬱な職場に悩まず,また,組織が有する人的資本の生産性を上げるために必要な検討であると考えています。