
鈴木智之〔著〕『ワークプレイス・パーソナリティ論-人的資源管理の新視角と実証』東京大学出版会 2023年出版
著者からのメッセージ
職場の「こころ」に注目が集まっています。
昨今の経営活動の一大潮流は「人間心理への注目」ではないでしょうか。これまでは経営成果や組織行動という「成果・行動」面に注目が集まっていましたが、その背景にある「心理」すなわち、心理的安全性、エンゲージメント、1 on 1ミーティングなど、人間心理から企業活動を理解しようという試みがこれまでにない勢いでなされ始めています。そのような中で、「パーソナリティ(Personality)」という、幅広い人間心理を扱う、歴史の深い、大きな研究分野をこれからは無視できなくなると思われます。
例えば、職場の心理的安全性を破壊するような社員がいます。1 on 1ミーティングで部下の業務熟達を促進できる上司とできない上司がいます。入社後すぐに会社に馴染んで活躍する社員と馴染めずに早期退職する社員がいます。これらの社員の心理を理解するためには「パーソナリティ理論」が必要不可欠だと思うのです。
パーソナリティ理論は経営分野ではなく、学校・医療を場面とした心理学分野で長年の研究の歴史を持ち、膨大な知識の蓄積があります。この蓄積された成果を経営場面の「ワークプレイス(Workplace)」へ適用し、人的資源管理の諸施策に展開することが国内外で求められており、その体系的解説書が望まれていたところでした。ビッグファイブ、ダーク・トライアド、GRITなどの世界的に蓄積されたパーソナリティ研究の知見は、どのように職場と労働に活かせるものなのでしょうか。これまでは捉えどころがなかったパーソナリティ理論の潮流に研究者と実務家はどのように対峙すればよいのでしょうか。
本書はそれに取り組んだものです。パーソナリティ理論を基盤として、ワークプレイス・パーソナリティとして体系化し、それを人的資源管理論に展開するのが本書の目指したところです。わが国でパーソナリティを体系的に論じ、経営場面の人的資源管理に本格的に展開した書籍・論考は本書が初めてのものだと思われます。本書では既存研究の解説にとどまらず、日本企業への調査を独自に実施して、希少なデータに基づく新たな実証結果も多数報告しました。採用、選抜、人材育成、人事評価、それぞれの人事活動に関連する世界中の膨大なパーソナリティ研究を包括的にレビューし、独自の実証研究によってこれからの日本企業への提言を大胆に展開しました。
関連する賞・取材・講演・研究助成・共同研究など(抜粋)
厚生労働省後援 日本の人事部 HRアワード2023入賞関連
本の中身の一部をご紹介!


